事業が上手く成長していくかの判断基準として、ユニットエコノミクスが成立しているか?という問いがあります。
ユニットエコノミクスは、製品を作成するために必要なコストと、その製品が企業にもたらす収益を比較して分析することです。この分析により、企業は生産する製品やサービスを最適化し、より収益性の高い製品を開発することができます。
これはメディア事業や、SaaS型の製品に対してよく使われる指標ですが、短期的な売上ではなく中長期的に売上が発生する見込みの事業モデルが健全化を図るために利用します。
ユニットエコノミクスが成立しているのか?
例えばあなたがSaaS型製品のプロダクトマネージャーだとします。月額1000円の有料機能を提供していると仮定して、有料会員1人を獲得するのに3,000円の広告費がかかった場合どうでしょうか?
この有料会員が当月やめてしまうとしたら、売上1,000円に対して3,000円の広告費なので2,000円の赤字になってしまいます。
逆に1年間契約するとしたら12,000円の売上になるため、広告費は妥当のように思えます。
このように事業として採算が取れているのか?を把握する際ユニットエコノミクスで図ります。
ユニットエコノミクスとはビジネスにおける顧客1人あたりの採算性、あるいは経済性を示す指標で、顧客生涯価値(LTV)と、顧客1人あたり獲得コスト(CAC)を使って、下の計算式で表します。
ユニットエコノミクス = LTV / CAC
顧客生涯価値(LTV)とは.
LTVの計算方法はいくつかありますが、ここでは一般的なサブスクリプションサービスと、ECサービスにおけるLTVを紹介します。
サブスクリプションサービスであれば、LTV = ARPA(平均売上) × 継続期間で計算することができます。
継続期間は(1/月次解約率)で表すことができます。ちなみに代表的な解約率は頭に入れておくと計算がしやすいです。 海外の調査では、Enterprise製品の解約率は1%前後、SMB製品の解約率は3~7%と言われています。
1%..100ヶ月 2%...50ヶ月 3%...33ヶ月 5%...20ヶ月 7%...14ヶ月
ちなみに継続期間がなぜ(1/月次解約率)なのか?こちらの記事の説明が非常に参考になります。 ユーザの平均継続期間が「1/解約率」で求められることの数学的証明 - it's an endless world.
ECサービスであれば、顧客が継続してくた期間と、購入頻度、平均売上から計算することができます。
LTV = 平均売り上げ × 平均利益率 × 1年あたりの購入回数 × 平均顧客生涯(年数)
顧客一人あたりの獲得コスト(CAC)とは
一人の新規顧客を獲得するのに掛かるコストになり、獲得するためにかかった営業及びマーケティングの費用 ÷ 顧客数で表すことができます。
実際に利用した広告費だけではなく、営業チームやマーケティングチームの人件費(アポのコスト)なども含めるとより正しい数字に近づきます。
ユニットエコノミクスはいくつであれば、健全なのか?
一般的にSaaS事業であればユニットエコノミクスが3以上あれば健全だと言われています。
これは顧客の解約率とCACの投資回収期間から言われているものになります。
プロダクトの規模や性質により異なりますが、一般的に投資回収期間は6ヶ月から12ヶ月ほどを目指すと良いと言われています。
ここでいう投資回収期間は、投資回収期間(ヶ月) = 1顧客獲得コストの総額 ÷(1顧客の平均売上金額)で表すことができます。
冒頭のように3,000円のコストを掛けて、1顧客の平均売上が1,000円であれば3ヶ月で回収できる感じです。
これをLTVの式も付け加えると LTV/CAC = ( ARPA × (1 / 解約率)) / (ARPA × 投資回収期間)になり、LTV/CAC = 1 / {(解約率)×(CAC回収期間)}になります。 ここに一般的な投資回収期間12ヶ月と、SMBの解約率3%を当てはめると、LTV/CAC=1/(0.03×12)=2.8となるため、3以上であれば妥当と言われます。
このようにユニットエコノミクスを正しく理解することで事業が上手く行っているのか判断しやすくなります。プロダクトマネージャーとしても覚えておくべき用語なのでぜひ正しく理解するようにしてください。